膝の痛みを引き起こす可能性が考えられるタナ障害
膝の痛みを引き起こす可能性が考えられる障害や病気のひとつとしてタナ障害というのがあります。
もし、膝内側に痛みや腫れが生じたり、スポーツ時などに膝の皿の内側に痛みやひっかかり感があって、膝を曲げると痛みが強くなったりする場合には発症が疑われます。
また、膝の屈伸運動をした時や椅子や床から立ち上がる際などに、膝に何か挟まるような感じがして、その時にコキッ・コツッといった音がする場合や、膝の皿のあたりに違和感や重苦しさがある場合も発症している疑いがあります。
このような発症が疑われる症状がみられる状態を長期間そのまま放置していていると、膝を動かした時だけでなく安静時にも痛みを感じたり、痛みが慢性化してしまったりすることもあるので一度病院を受診することをおすすめします。
膝の関節内部には関節腔と呼ばれる空間があって、その空間は滑膜ヒダという膜のような壁で仕切られています。
そして膝の皿の膝蓋骨と太ももの骨の大腿骨の間のヒダは、ちょうど物をのせる棚のように見えることから「タナ(棚)」と呼ばれています。
実は、滑膜ヒダは母親の体内にいる胎児期に一時的に作られるもので、特に何の機能も持たない組織なのですが、胎児の約半数は産まれた後もそのまま残ります。
その為、膝の曲げ伸ばしを繰り返すことにより、タナが膝蓋骨と大腿骨の間に挟まって、大腿骨の下端の膨らんだ部分と擦れてしまうことで炎症を起こします。
その結果、腫れや痛みと言った症状を引き起こすのがタナ障害と呼ばれるもので、タナ症候群と呼ばれることもあります。
膝の屈伸と打撲などを伴うスポーツ種目において良く見られますし、体質的にタナに厚みがあったり大きかったりする人については、膝を酷使した状態で膝を強打すると症状が現れやすくなります。
特に、太ももの筋肉が疲労している状態では、筋肉が緊張していることからタナの摩擦が強くなって症状が発生しやすいです。
ちなみに、患者は10~20歳代の若い人に多くて男性よりも女性の割合が高いですし、野球・バスケットボール・バレーボール・ハンドボール・陸上競技などをしている人に発症しやすいです。
タナ障害の治療は、軽症の場合なら運動量を抑えたり、運動後に患部をアイシングしたり、炎症を抑えるシップなどの消炎鎮痛剤を使用したり、太ももの筋肉のストレッチングをしたりして対処することが可能です。
多くは激しい運動を控えて安静にしていれば、徐々に炎症が治まって大体2ヶ月前後で治ると言われています。
しかし、痛みが繰り返し生じたり数ヶ月にわたって痛みが引かなかったりする重症の場合には、痛み止めの注射をしたり関節内に挿入する内視鏡による手術の関節鏡視下郭清術でタナを切除することもあります。
ちなみに、先にも触れましたが特に何の機能も持たない組織なので切除しても問題ありません。
予防として心がけることは、膝周辺の筋力を鍛えるトレーニングや柔軟性をアップするストレッチを行うことです。
また、患部の冷えは炎症を引き起こしやすく悪化させる要因になるので、日頃から膝を冷やさないように注意することが大切です。