我孫子市 有痛性分裂膝蓋骨

有痛性分裂膝蓋骨は成長期の男子に多く見られる障害

 

膝蓋骨の分離症の有痛性分裂膝蓋骨は、成長期の男子に多く見られる障害で、分裂した膝蓋骨に疼痛が発生して歩行や運動に障害をきたすものです。

分裂部分は外側に多くみられて、特に外側広筋付着部の上外側部分で分裂するのが最も多いですし、2分裂だけではなく3分裂やそれ以上の多分裂も見られることがあります。

この分裂膝蓋骨の原因ははっきり分かっていませんが、先天性異常・後天的癒合不全・外傷性癒合不全など様々な説があって原因も多様的ではないかと考えられています。

ただし必ず障害をもたらすものではなくて、疼痛や機能障害を生じる有痛性のものだけが問題となります。

 

膝蓋骨は小さな骨核と大部分の成長軟骨から始まって、成長と共に少しずつ成長軟骨部分の骨化が進行して成人と同様の形に形成されていきます。

その過程で上外側部分の骨形成が最も遅くて、骨形成が完成する前は耐久性に劣るため外力に対する抵抗力が完成された骨と比べて物理的に脆弱です。

また膝蓋骨の上外側には強力な大腿四頭筋の腱が付着しいて、その張力の影響を受けやすいという物理的な環境下にあるため骨形成が部分的に阻害されると考えられています。

上外側に発症する確立が高いのは、この成長過程に起因するところが大きいと言えます。

ただ有痛性分裂膝蓋骨に限っては、外傷やスポーツによる過剰負荷など何らかの外力が加わることで、分離骨片と膝蓋骨本体の間を繋ぐ軟骨や線維を損傷して症状が出現するのです。

 

発症に伴う主な症状は、膝蓋骨の外側か下端に疼痛・圧痛があって、疼痛は運動により誘発され安静にすると軽快します。

触診においては分裂部分に骨性の膨隆を触知することがありますし、癒合不全によって転位している場合には、異常可動性を触知する可能性もあります。

またレントゲン検査では分裂部分が膝蓋骨の形成過程で癒合しなかった骨核であることから、骨折とは違った丸みを帯びた形状であることが多くて、中には分裂部分の開大や転位が見られることもあるのです。

それからスポーツなどが誘因で起こるものについては、分裂部分の境界部の軟骨を中心に骨折や疲労骨折を生じた様な形状を呈する症例もあって、膝蓋骨骨折との鑑別を必要とすることもあります。

 

有痛性分裂膝蓋骨の治療と予後ですが、基本的に運動を中断して安静にすることにより疼痛は軽快します。

先天性のものを除いてスポーツなどの負荷で癒合不全が発生していると考えられるものについては、癒合促進のため低周波や超音波療法などを実施します。

ある程度疼痛が消失した後は、分裂部分に負担の掛からない運動だけが許可されて、運動中は患部をテーピングやサポーターなどで固定するように指示されます。

ただ3ヶ月以上の経過しても症状に改善の傾向がみられない場合には、分裂骨片の摘出・分裂骨片の接合・外側広筋や外側支帯の切離などの手術が実施されます。

予後は保存療法や手術による治療でほとんどの場合良好になりますが、発病や発見が遅くて関節面の変形が進行している場合は変形性関節症の症状が残存します。